一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
だとしたらイベントでカップル成立した人はどうなるんだろう。

彼らはたった数時間で相手を決めた。


「あの人たちはこれからどういう時間を共に過ごすかが今後を左右する。カップル成立率と婚約率が等しくないことは美羽ちゃんだって分かってるでしょ?」

「うん」


菅原くんの言葉を借りるなら、これからどうやって恋い焦がれる時間を過ごすか、そこが大事なのだ。

きっと今、カップル成立した人たちは一緒に帰り、こうしてお茶をしてる。

そこでは気分が高揚しているに違いない。

反対にひとりで帰った人は…


「ツライよね」

「そうだけど、それっていつもと変わらないよね?なんで今回に限ってそんなに気にしてんの?」


ストローでコーヒーをかき混ぜていた手を止め、菅原くんを見ると私を真っ直ぐに見つめて言った。


「同情してる?」


耳が聞こえないから、か。

でも同情なんてする訳ない。

人は完璧ではない。

多かれ少なかれ同情される部分はある。

目に見えるか見えないかだけで、そこにいちいち同情し、反応してたら身が持たない。


「じゃあなんで?」


私を問い詰める菅原くんに耀の名前を出す。


「耀さんと田辺さんが似てるから」

「は?突然、何?」


いきなり耀の名前を出したことに菅原くんは驚いたようだ。

でも私は田辺さんと話していて耀のことがふと浮かんだ。

恋愛をしたいのに出来ない、耀のことが。


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