一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
美羽ちゃんがいるとは知らずに入社したとは言え、美羽ちゃんの将来が変わった瞬間に居合わせてしまった俺は聞かずにいられなかったのだ。


『就職の役に立てばと思って…なんてね、嘘。ただの保険』


保険ってなに?

美羽ちゃんのことを知らない人はそう疑問に思うだろう。

でも俺にはそれだけで十分分かった。

美羽ちゃんはプロのテニスプレイヤーとしての夢を見つつ、故障やトラブルでその道が消えることを考えていたのだ。

だから就職の時に他の人と戦えるだけのものを手にしていた。

それとこれは俺の予想に過ぎないけど、色んな資格を勉強したのはテニス以外に夢中になれるものを見つけるためだと思う。

現に今は資格を取ることに燃えていて、新しくなにを取得しようか、時々ネットで調べてる。

ただこんな風に気持ちを切り替えられるのは美羽ちゃんが一流のアスリートだったからだ。

俺は希望もしない部署に配属された反動で髪を金髪に染め、ピアスもあけた。

辞めさせたいなら辞めさせてみろ、って反抗心で。

それは今も内心思っている。

だから野田専務が推進課の存続に異議を唱えてくれた時、俺は嬉しかった。

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