一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
もっとも、エンパスがどうとかじゃなく、美羽ちゃんに惚れないひとはいない。

良い人止まりで恋に発展はしないけど、美羽ちゃんに関わったひとはみな、美羽ちゃんとその後も関わろうとする。

それもそのはず。

ハツラツとした笑みにハッキリとした口調、健康的で、上下関係がしっかりしていて、礼儀正しくて、ノリがいい。

さらに他人の恋愛成就のために神社にお参りに行き、自腹でお守りを買って来る優しさがあって、失恋の時はとことん話に付き合う気力もあるし、頃合いをみて次へと誘う。

ストレス発散という名の絶叫系アトラクションに乗ったり、激辛料理を食べに行ったりするときもある。

それが自身の苦手なことであっても、担当した人が吹っ切れるまで付き合うんだ。

そんなこと俺にはとても真似できない。

出来ないからこそ、俺は美羽ちゃんを好きになった。

だから振り向かすために『好き』って事あるごとに言ってみた。

その人のことばかりを考えていたらいつのまにか好きになっていた、というのを狙うために。

でもそれは俺じゃなかったようだ。

美羽ちゃんの頭の中を支配したのは耀さんだ。

耀さん、実は美羽ちゃん好みのイケメンだし。


『推進課に来る人は恋愛に対して弱気で背中を押してもらいたいひとなんだよね』


美羽ちゃんは弱くないから少し違うかもしれないけど、押してあげなきゃいけない。

美羽ちゃんの背中を。

耀さんの背中を。

俺の最後の仕事として。


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