一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
ーーー「自分で誘っておきながらなんで遅れるかなー」
腕時計を見れば、約束の時間から20分も過ぎている。
なにかあったのではないかと電話してみるも出ない。
今日は休日出勤(イベント)の振替休日。
土日なら人で混み合う駅前も平日だから人はまばら。
目を凝らしてみればひとりひとりの顔はよく見える。
けど、菅原くんの姿は見えない。
もう一度電話してみよう。
手に握っていたスマートフォンで菅原くんを呼び出し、耳に充てる。
すると視界の端に気になるシルエットを見つけた。
あの俯いているせいで猫背な、スタイルの良い男性は…
「あ、吉木さん」
パッと振り向いたその人は耀だ。
目が合う。
その瞬間、研究室で向き合った時のようにドクンと鼓動が強く打ち付けた。
それは恐らく菅原くんにこの前『美羽ちゃんさえ近付けば…』と言われたことと、長い前髪を七三の割合で分けられているせいだ。
伊達メガネも外しているからハッキリとあの綺麗な瞳が見える。
ちなみに七三分けと言ってもラフにかきあげられ、フロントにボリュームがあるためオシャレでカッコいい。
五分丈の黒のジャケットに黒のパンツ、白のカットソー、白の靴。
モノトーンで統一された服装もスタイルの良い耀にとても似合っている。
姿勢は悪いけどモデルと言われれたら誰もが頷くだろう。
「どうしたんですか?その格好」
距離感を気に掛けながら近付き聞く。
「あ、えっと菅原さんに言われて…」