一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「この服を着させられて、髪をセットされて、そのまま急用が出来たと言ってどこかへ行ってしまいました」
急用なんて嘘だ。
嘘は耀に通用しないことを分かってるだろうに、なぜそんなことを。
菅原くんの行動を理解に苦しむとタイミングよくスマートフォンが震えた。
『耀さんと会えたみたいだね』
そのタイムリーな内容に辺りを見回すもやはり菅原くんの姿はない。
続け様、メールだけが届く。
『美羽ちゃん好みのイケメンに仕立て上げたよ』
それはたしかにそうだけど、耀の姿を勝手に変えるのはやめた方がいいって言ったのは菅原くんなのに。
『耀さんが希望したんだよ。美羽ちゃんと会うって事前に話したらキチンとした格好をしたいって。美羽ちゃんはイケメンが好きだって言ってたからって』
耀を見上げると不思議そうに首を傾げている。
それに重ねるように私も首を傾げると、またメールが届いた。
『いいんだよ、推進課の職員が恋をしても』
つまり耀が私に気があり、私さえ良ければ耀と付き合ってもいい、と。
「でも、いや、どうなんだろう」
菅原くんを疑うわけじゃないけど今回ばかりは信憑性に欠ける。
耀は恋愛に幸せを求めないと言い切った人。
それに体質上、恋愛は出来ない。
「まして私も自分の気持ちがよく分かっていないんだから」
スマートフォンに一方的に話す。
そんな私に耀が口を挟んだ。
「どうかしましたか?吉木さんの不穏な気持ちが僕にも伝わって来たんですが」
「本当すごい体質ですね。ごめんなさい。そうですよね。隠しても無駄ですよね」
スマートフォンを耀に見せるとみるみるうちに顔が赤くなった。