一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「す、すみません。僕、勝手に吉木さんのこと意識してて」
「本当ですか?!」
直接言われると余計に混乱する。
「だって恋愛は出来ないんですよね?幸せは仕事にあるって言ってたじゃないですか」
「あ、はい。でもそれは今まで好きになれる人がいなかったのでそう思ってただけで、吉木さんと会って変わりました。ただ、たとえ両想いになったとしても不安な感情にさせてしまうと申し訳ないし、そこに気付いてしまう僕はいつもビクビクしてしまう。好きな人を不快にさせてしまうことほど辛いことはないって思っていたんです。だから本当はこの気持ちも隠しておくつもりでした」
恋愛を遠ざけていた本当の理由はこれだったのか。
幸せの形が恋愛にあるとしたら、そこに少しでも陰りがあるならしない方がマシ。
耀の言い分は分かる。
でも菅原くんに背中を押されてしまった。
おそらく菅原くんは耀の気持ちにどこかで気付き、推進課の職員として私には知らせずこっそりと耀のお世話を始めていたんだ。
「 僕は吉木さんといると居心地がいいんです。だから惹かれました。でも好きになれた人が出来たと同時に怖いんです」
斜めがけされた鞄の紐をギュッと力強く握り締め、体を小さくしている耀を見て、初々しさに懐かしさを感じる。
恋が怖いと初めて思ったのはいつの頃だっただろう。
「でもエンパスの体質がなくたってそこは誰でも同じですよ…なんて偉そうですね。私、人に意見できる程経験豊富なわけじゃないのに。すみません」
ただ豊富でなくてもこの胸の高鳴りと胸に宿る温かい感じがなにかは分かる。
未だに紐を強く握りしめている耀の手に触れ、俯いている顔を覗き込む。