一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「す、すみません!近かったですよね」
慌てて私から離れた。
それに応じて私も椅子から立ち上がる。
「ごめんなさい。なんかドキドキしちゃって」
「いえ、僕がいけませんでした。すみません」
ただドキドキしただけなのに互いに謝っていることがだんだん可笑しくなってきた。
「プッ」
吹き出すと耀も後頭部を掻いてはにかんだ。
「少しずつ慣れていけたらいいですね。顕微鏡にも、お互いにも」
「あ、はい。顕微鏡は見たければ言って頂ければ自宅にもあるので見れますから…って、下心はないですから…って、いや、あの、その…」
しどろもどろになる耀を見てまた笑いが込み上げてきた。
「暑いなー」
なんて言いながら赤くなった顔を手で扇ぐ感じも初々しくてキュンとする。
当然それでは熱は冷めないのに。
だから耀は長袖の白衣の袖口を捲った。
その瞬間に現れたのは細いけど男性的な筋の通った魅惑的な腕。
耀が言った下心という言葉が重なり、あの腕に抱かれたら、とか、ベッドの上ではどんななんだろう、なんて想像してしまい、今度は私の方が赤面してしまった。