一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「ど、どうしました?!」
慌てふためく感じもまた可愛らしいけど突然のことには慣れない。
ピザを手に取る前で良かった。
驚いて体がビクッとしてしまったせいでピザを落とすところだった。
「ぼ、僕、自分のことに舞い上がってて、菅原さんが吉木さんのこと、好きなのを伝え忘れてました」
伝え忘れていた、って…
それを耀が伝えてどうするつもりだったのだろう。
「そもそも菅原くんは私のこと本気じゃありませんよ」
「いえ。本気です。僕に嘘は通用しません。菅原さんはたしかに吉木さんが好きです」
でも私たちを引き合わせたのは菅原くんだ。
その程度の気持ちだということじゃないのか。
「自分の気持ちを押し殺したんです。僕に悟られまいと必死に気持ちを別なものにしようとしていました。でも菅原さんには覚悟が感じられました」
覚悟とは、好きな人を別の人のところへ押し出すことだろうか。
それとも…
「菅原さんは仕事を辞めるつもりでいるそうです」
耀に対して隠し事をしても無意味だと思ったのは私だけではない。
菅原くんは耀に他社への転職が決まっていることを伝えていた。
「これは僕の憶測に過ぎませんが、好きな人のお世話が出来て、もう心残りがないのではないでしょうか。先ほどの話を聞く限り、推進課の存続を願う吉木さんの願いも僕と付き合うことで叶えられた訳ですし」
「そんな…」
そんなことも知らずに、私は菅原くんの言葉をいつも冗談で受け流し、本気にしていなかった。
ちゃんと好きな人に好きと言っていた彼の気持ちを蔑ろにしてしまっていた。