一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
最低だ。

自分の気持ちだけでなく他人の気持ちに鈍感で、里香だけでなく菅原くんという身近な人を私は傷付けていた。

私はいったい、なんなんだろう。

どうしてこんなに気持ちに鈍感なの。

「耀さんが羨ましい」

「僕は吉木さんが羨ましいです。でもそれでいいと思います。互いの足りない部分を補えるのですから」

そう言うと耀はピザを一枚お皿に取り、目の前に置いてくれた。


「抱き締めるのは場所的に問題があったので、これを食べてください」

「でも」


食欲が落ちてしまった。

そんな私を見て、耀はピザをナイフとフォークで一口大に切り、口元へと持ってきた。


「美味しい食べ物もまた気持ちを変えてくれます。さ、どうぞ」

「美味しい。こんな時なのに、美味しいです。でもそれが余計に申し訳ない」


人を傷付けるだけ傷付けて、私だけが幸せになるなんて、許されることではない。

それにこんな風に思っていたら耀の体に悪い。


「ごめんなさい。今日は帰ります」


耀まで傷付けたくない。

その一心で会計伝票を取り、立ち上がると耀もまた立ち上がった。

そして私の腕を掴み、胸元へと引き寄せると力一杯抱きしめてきた。


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