一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「離してください!耀さんの体に障ります」
「そんなことどうでもいいです!僕は吉木さんの、好きな人の負の感情をプラスにしてあげたいんです!それが出来るのは僕しかいない!」
耳元で聞こえる強い口調に驚き、身動いで離れることも出来たのに抵抗を諦めた。
すると耀は納得したのか私の体をゆっくり離し、そして両方の肩に触れた。
それに合わせるように視線を上げる。
そこには案の定具合の悪そうな耀がいた。
「ごめんなさい」
「謝らないでください。いや、謝るなら目を閉じてもらえますか?」
それは見てくれるなと言っているのだろうか。
好きな人に具合の悪いところは見られたくない、とか。
それなら、と視線を外す。
と、その直後耀の顔が近付いてきたのが横目で捉えられた。
「…っ!」
突然のことに驚き言葉の出ない私の唇にまた耀は唇を重ねる。
長いキスに唇が離れた時、耀は甘いため息を吐き、そして私の体を強く抱き締めた。
「僕は吉木さんが好きです。どんなに傷付いても傷付けられても吉木さんを好きな気持ちは変わらない。皆さんも同じです。僕と同じようにみんな吉木さんが好きなんです。気持ちに鈍感で、でも人の気持ちに寄り添えるあなたが大好きなんです。だから大丈夫。吉木さんが自身を責めることはありません」
しっかりと言い切る強い言葉に心が震える。
また店員さんが来る可能性があることも忘れて耀の背中に手を回し、しっかりと抱きつく。
「それでももし、私が、私の周りの人を傷付けていると気づいたら教えてください。それが出来るのは耀さんしかいない。耀さんには負荷を掛けてしまうかもしれないけど」
「構いません。そのあとのフォローもこうしてきちんとします。そうすれば僕の気持ちは吉木さん同様、高揚しますから」
キスをされてドキドキしていることを言葉にされると無性に恥ずかしい。
でも耀との出会いは前に耀が言ってくれたように私にとっても奇跡なのだと思えてきた。
フォローも、気持ちへの寄り添いも、とても大事なことで、解決への糸口になることに後々改めて気付く。
今はキスの後で恥じらいはあるけど、食事も美味しく食べた。
ひとえに耀のおかげだ。
居心地がいい。
耀と一緒にいることがとても気持ちいい。
私も耀に、みんなにそう思われたい。