一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
ミッション10推進課の存続へ尽力せよ
「離れがたいな」
お店を出たところで何気なく口から出た言葉に、耀は固まった。
でも時刻は午後9時。
別れるにはまだ早い。
「で、でしたらうちに来ますか?」
「いや…それは」
せっかく耀が誘ってくれても、自宅となると万が一社長や会長に見られたりしたら大ごとだ。
まだ正式に挨拶もしていないのに、何してるのかと言われ兼ねない。
「大丈夫ですよ」
耀のその自信満々な言葉に乗っかり、自宅へと向かう。
でもこういう時はお決まりのようにタイミング悪く、社長と出くわすものだ。
「……わっ!?」
社長と驚きの声が重なった。
「きみは吉木さん、だよな?なぜここに?」
「しゃ、社長は遅くまでお仕事ですか?」
冷静を装って聞くと、社長は他社との会食で遅くなったと言う。
「いや、それより問題はきみたちだ。その様子だと…」
心と頭の中を読むような妖しい眼光から目を逸らしたくなる。
でも私が逸らすより先に、後ろに立っていた耀に視線を移した社長が微笑んで言った。
「幸せな報告が聞けそう、だな?」
振り返り、耀の様子を伺えば彼は照れくさそうに小さく頷いた。