一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
その好奇な視線に耐えられず、さらに視線を逸らすとごめんなさいと謝られた。


「まさか耀に恋人が出来るとは思わなかったからジロジロ見ちゃって」

「わたしもだよ」


奥様の言葉に社長は同意すると私を見て言った。


「推進課の存続に耀を条件にしたのもほんのわずかな可能性を求めたからだった。まさか恋人が推進課の職員になるとは思わなかったが、いや、嬉しいよ」


目に涙まで溜めて言う社長の言葉には私が推進課の存続のために耀と付き合ったのではないと疑ってはいないことが分かった。

菅原くんと話していた通り、耀の体質を知る社長は私との関係を疑ったりはしないのだ。


「式はいつにする?」


話の早い社長は奥様が急遽用意してくれたおつまみを食べながら日本酒片手に真っ赤な顔をして私たちに詰め寄って来る。


「父さん、吉木さんが困ってます。やめてください」

「ハハ、さすが耀だな。恋人の気持ちなんてお見通しだ。でも、大丈夫かい?耀も、吉木さんも」


思わず不安を吐露した社長は真剣な表情で私に問いた。

でも大丈夫。


「気持ちの切り替えは早い方ですし、落ち込んでても気持ちを切り替える方法をふたりで見つけているので。ね、耀さん」

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