一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
頭を下げる社長に私も合わせて頭を下げる。


「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します」

「公私ともにな。よろしく頼むよ」


その社長の言葉にハッと顔を上げ、問い掛ける。


「私はこのまま推進課の職員として働いて良いのでしょうか」

「あぁ。構わないよ。将来的に耀は重役にするが、社長にはならないから、耀のサポートはしなくて大丈夫だ」


社長は優と決まっているらしい。

でも私が言いたいのはそこじゃない。


「野田専務は…」


それだけで社長には伝わった。


「わたしから話しておこう。推進課は任務を全うしたと」

「ですが父さんは野田専務が反対されてる理由をご存知ですか?」


耀が社長に聞くと、社長はそんなことは知らないと冷たく言い切った。


「理由など知ってどうなる?理由次第で存続を決めるのなら初めからこんな提案していない」

「そうかもしれませんが…」


人の気持ち云々を仕事とは割り切って考える社長と対照的な耀だからこそ、納得がいかないのだろう。

それは私も同じ。

傷付いている人がいて、その人たちを救う方法を思いつかない限り、自信を持って堂々と推進課としての仕事は出来ない。


「僕が手伝いましょうか」


隣でポツリと呟いた耀に顔を向ける。


「吉木さんたちは失恋し、傷付いた人たちのフォローをしたり、癒したりはしてる。でも野田専務が向けた問題は、表向きは平気な顔をしているけど、推進課の存在に実は傷付いている人がいるということですよね?」

「そうですね」


野田専務の奥様のように、幸せの裏で傷付いている人たちをどうにかしないといけないのだ。

でもそこまで私たちは手が回らない。

と言うより気付かない。


「僕なら気付くことが出来ます」

「でもそれでは耀の体に支障が出るでしょ」


話を聞いていた奥様が耀の体を心配した。
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