一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「お忙しい中、すみません」
社長と話した二日後。
推進課の相談室にやって来た野田専務の奥様、野田優子さんは初めて訪れた相談室をキョロキョロと見回している。
その姿を私はマジマジと見つめる。
エンジニアの優子さんが推進課に来ることはない。
だから会うのは初めてなのだ。
もっとも、同じエンジニアとして菅原くんは優子さんと面識がある。
バリバリのキャリアウーマンだと言っていた。
その通り、切れ長の目に、真っ赤な口紅。
ショートカットに大きなイヤリング。
細身の体型にピッタリ合うパンツスーツ。
カッコいい、のひと言に尽きる。
「そんなに見ないで。恥ずかしいわ」
ソファーに腰掛け、差し出したコーヒーカップで顔を隠す姿は可愛い。
一瞬で私は優子さんの虜になった。
「それで?私になんの用かしら?夫のいる身に恋愛関連の話、はないわよね?」
上目遣いに聞いてきた優子さんに向かい、姿勢を正して真っ向から話をする。
「野田専務が推進課に反対されているのはご存知ですか?」
「そうなの?」
驚いた反応は本当に知らないと言わんばかりだ。
それなら、と話の矛先をずらす。