一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「優子さんは推進課の存在に反対ですか?」
「私?私はもう関係ないからどちらでもないわ」
そこまで言うと優子さんはコーヒーをひと口飲んでフッと笑った。
「でも、少し前までは反対だったかな」
それから優子さんは里香に聞いた話と大差ない話を初対面の私にしてくれた。
「でも、あの、どうしてそんなに詳しく話してくれるんですか?あまり話したいことじゃなかったですよね?」
「そうね。本当に親しい人にしか話してないわ。でももしかしたらあの人、私の気持ちを察して反対なんてしてるんじゃないかと思って。あなたたちに非はないのに。それならきちんと説明すべきだと思ったの」
真面目な優子さんの姿勢に惹かれる。
そして優子さんはさらに言葉を重ねた。
「子供のことはね、もう本当に吹っ切れてるの。と言うより私は子供が欲しかったんじゃない。赤ちゃんが欲しかった。それに気付いたのよ」
どういうことかと首をかしげると優子さんは柔らかく微笑み、立ち上がり、内線で野田専務を呼び出した。
「なんだ、こんなところに呼び出して」
呼び出されてすぐに掛け付けて来た野田専務は私の存在に気付き、ばつが悪そうにした。
どうやら社長から聞かされたらしい。
私と耀が推進課の存続云々に関わらず、本気で付き合うようになったことと、推進課が存続することを。
「せっかくの優秀な人材がもったいない」
言い捨てる野田専務に優子さんが同調した。
「それはその通りね。菅原くんは推進課じゃなくてうちに欲しいわ。でも」
そこまで言って優子さんは野田専務を見た。
「私は推進課はアリだと思う。推進課の存在で幸せになっている職員はたくさんいるもの」
「でも嫌な思いをしている職員だっている」
遠回しに優子さんを想う野田専務の気持ちに胸が熱くなる。
それは優子さんが気付いていて通りで、優子さんは柔らかく微笑むと野田専務の手を優しく取った。