一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
『社内の内情に詳しいきみがカウンセラーになるのは利点がある。だがきみの後輩の辞表が今日、届いたばかりなんだ。その上、吉木さんを勉強に出すとなると人員が足りなくなってしまう。それに企業内カウンセラーは中立性を保たなければならない。知り合いが多いきみにそれが出来るかい?』
出来ます、と即答出来ない私の背中を耀が押してくれた。
『吉木さんには出来ます。僕のような気持ち悪い見た目の男にも普通に接してくれたんですから。それにメンタルは誰より強い。メンタルの鍛え方だって、気持ちの切り替える方法だって知っている。そして何より、人に好かれます。それはきっと吉木さんが寄り添ってくれる人だから。吉木さん以外に適任はいません』
あまりに褒められると恐縮する。
でも耀はとことん私を推薦してくれた。
『一年くらい推進課がなくたっていいじゃないですか。いや、むしろその一年で推進課反対派の方々もきっと推進課の有り難みに気付きますよ』
この言葉を受けて社長は会長に相談し、そしてその翌日、課長を通じて推進課の一年休課と吉木の出向(勉強)を言い渡した。
「なるほど。それはいいわね。私、主人には秘密にしてたけど、カウンセラーの先生の元に通ってたの。気持ちが吹っ切れたのはその先生のおかげ。あ、もし良ければその先生紹介しましょうか?勉強させてもらえるかもしれないわ」