一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
だから今回は断られてもすぐには諦めない。


「里香の言い分はごもっともだけど、でもお願い。今回だけでいいから。婚活イベントに参加してください」


ジョッキを取り上げられて空いた両手を机に付き、頭を下げて懇願する。


「ほんと、今回だけいいからっ!」


私の必死な願いに座椅子に凭れ掛かり腕組みをしている里香は訝しげな眼差しを寄越した。


「何が目的?」


頭を下げてまで誘っていることが気に掛かったようだ。

会長の孫が参加すると情報を漏らしたこともおそらく引っかかっているのだろう。

参加者については社内のことだから知られてしまうとは言え、推進課は楽しみのひとつとして通常、情報を公開していない。


「孫の参加を聞けば社内の女性はいくらでも手を挙げるでしょ?」


案の定そこを突いてきた。

別に私じゃなくてもいいんじゃないの、という里香の心の声が聞こえてくる。

でも違う。


『孫は孫でも耀の方なの』


そう言えたらどんなにラクだろう。

言えないのがもどかしい。


< 32 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop