一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「お願いします」
理由も言わず、ただただ懇願する私に里香は困惑した様子だ。
里香にだって悪い話しじゃないのに。
「会長の孫と結婚すれば部署異動だってなんだって叶うんだよ」
「なによ、それ。そんなの絶対にイヤよっ」
あ…間違えた。
里香は実力で認められたいんだった。
今の言葉はダメだ。
怒るのも無理ない。
「ごめん」
深く頭を下げて謝る。
「あ~…ううん。こっちこそごめん。美羽だって大変なのにね」
その前向きな言葉にガバッと顔を上げると里香は眉根を寄せて笑った。
「負けたよ、美羽には。お世話になった借りがあるからね。今回ばかりは参加してあげる。その代わり、ここ奢ってよ」
「お安い御用です!」
満面の笑みで応えて見せれば、里香は肩をすくめ苦笑いを浮かべた。