一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
あの人はたしか秘書課の女性。

秘書課に異動したい里香のことだから話を聞いているのかもしれない。

とても熱心に、かつ楽しそうに話をしている。

目を輝かせている姿は婚活イベントに無理矢理参加させたことの罪悪感のようなものを軽くしてくれた。

でも耀を見て欲しいというのが本音だ。


「まだまだこれからっすよ」


頼みの綱が切れそうな不安な状況を打破するかのような前向きな言葉を口にしたのは菅原くん。


「おはよう。運転ご苦労様。ていうか菅原くんの格好もすごいね」


ダボっとした大きめの真っ赤なポロシャツに黄色地に黒の水玉模様のズボンって…。


「個性的」

「美羽ちゃんは今日も地味だねー」


菅原くんに比べればスポーティーなグレーのパーカーにジーンズは地味だ。

でも主役は私ではないし、汚ることを仮定すればこれがベストな服装だ。


「ていうか、その呼び方、いい加減なんとかしてくれない?」


入社して2、3ヶ月経った頃から菅原くんは私のことを名前で呼ぶようになった。

しかもちゃん付け。


「なんで?いいじゃん。ミワって名前可愛いし、俺、美羽ちゃんのこと好きだもん。名前で呼ばせてよ」

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