一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
ポケットに手を突っ込んだ姿勢で少し前屈みになりながら視線を合わせてニコリと笑う菅原くんの顔をグイッと手で押し退ける。


「名前呼びはダメ。社会人として変。それと簡単に好きとか言わないの。『好き』は本当に好きな人にだけ言うの。これ、恋愛の常識。あと敬語使って。一応私、先輩なんだから」

「先輩ねぇ。じゃあ先輩。ひとつ聞いてもいいっすか?」


改まってなんだろう。

菅原くんを横目で見上げるとどこか遠くを見ていた。

その視線の先を追う。

そこには里香がいた。


「あのひと、先輩の親友なんですよね?その親友を推進課存続に関わらせること、その後起こるであろう後継者争いに巻き込ませることはちゃんと考えましたか?あと万が一にでもあの人に好きな人がいた場合と、ここで耀さん以外の人に惹かれた場合どうするんですか?耀さんの相手、他に考えてます?」


矢継ぎ早の質問をひとつひとつ、頭の中で復唱し噛み砕いていく。

そして里香を見て、全て想定済みだと頷く。


「へぇ。ちゃんと考えてたんだ」


もう敬語じゃなくなってる。

睨むようにして見上げれば口元に笑みを浮かべてるし。

バカにしないで、って言えばいいのだろうか。

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