一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「実績が伴えば文句のつけようがないんだけどさ……」
日本酒を煽りひと息ついている里香のお猪口に日本酒を注ぐ。
「ありがと。でもさ、結局のところ、女の質の問題だと思うんだよね。会長は良い女を手に入れられて、お父様はダメな女に当たっちゃっただけの話し。それを強制するのはどうかと思わない?」
里香は酔ってくると必ずこの話をする。
同じことを何度も何度も。
年寄りじゃないんだから、と言いたくなる。
それに日本酒にエイヒレという組み合わせも親父クサい。
見た目に隙がない分、気取ってなくていいのかもしれないけど、美人の据わった目は直視出来るものじゃない。
「強制はしてないって」
里香から視線を外し、唐揚げにレモンを絞りながらいつものように答える。
でもこの答えに納得のいかない里香は音を立ててお猪口を置いた。
「美羽は推進課の立場があるからそう言うのよ」
里香の言う通り、私、吉木美羽は社内恋愛推進課に所属する社員だ。
入社当初、配属された部署がまさかの社内恋愛推進課で、あの時はこの課の存在以上に驚いた。
恋愛相談なんて友達の話を聞くだけで役に立ったことはないし、大学で心理学を専攻していたといってもそんなの専門知識からは程遠いもので、恋愛経験も豊富ではない。
人の気持ちに関してもどちらかと言えば疎い。
そんな私が頑張ってアドバイスしようとしても簡単に出来るわけがなくて。
上手くいくと思っていたカップルが不成立に終わった時や、破局してしまった時、責任を取れと怒鳴られたこともある。
その度に『なんで私が怒られなきゃいけないのよ』『好きで人様の恋愛の面倒を見ているわけじゃないのよ』
そう言いたくなるけど、悪いことばかりじゃない。