一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「どうしたらいいんだろう」
マイクロバスの荷台に積まれた荷物を降ろしながら悩む私の頭にポンと手が乗った。
振り向けば菅原くんが私の顔を覗き込んで言った。
「悩んでんの?」
「あー、うん」
ひとりで悩んでいてもラチがあかない。
ここは正直に話し、菅原くんの意見を聞こうと思った。
頭に乗せられた手を払うことなくそのまま意見を求める。
「今までお世話してきたひとたちはさ、みんな恋がしたくて、相手を探したくて参加してる人たちでしょ?そうじゃない人をその気にさせるのって難しいよね」
恋愛に弱気になっている人の背中を押してあげることがそもそもの推進課職員の仕事だと私は考えている。
自分の力ではどうにもならない恋愛のお手伝い。
でも今回は違う。
恋愛をしたいと思っていない耀にどう接していけばいいのか、悩んでしまう。
「だから俺、言ったじゃん。 恋愛を強制するのは変だって」
そういえば菅原くんは事前にそのところに触れていた。
今になってそこに気付く私に比べていかに優秀か、ハッキリと分かる。
「いやいや、美羽ちゃんが凹んだってしょうがないっしょ。それより…そうだな。美羽ちゃんは恋、したいと思う?」
「え?なに急に。なんで私の話になるの?」
話の矛先が変わったのを機に、手を動かす。
軍手やトングといったバーベキューに必要な器具が入った箱を菅原くんに渡した。
すると菅原くんは箱を置き、私が次に持ち上げた飲み物の入ったクーラーボックスを取った。
「重い荷物を持つのは男の仕事。俺、細く見えるかもだけど、力あるんだからね」
力こぶを作って見せた菅原くんに「ありがとう」とお礼を伝える。
菅原くんは相手に気を使わせないようにするのが上手い。
さり気ない優しさは触れるたび、見習いたいと思うし、菅原くんの彼女は幸せなんだろうな、って思う。
恋愛は今はいいやって考えているけど、幸せにはなりたい。
誰か私のこと気に掛けてくれる人いないかな…って、そっか!
「そういうことか」