一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
菅原くんの言いたいことが分かった。


「耀さんのことを気にしてる人の背中を押せばいいのね?」


私と耀を一緒にするのは申し訳ないけど、私のように恋愛や見た目に自信のないタイプは声を掛けてくれるのを待っている。

自分から声を掛ける勇気はないのだ。


「なるほどね。うん、ありがとう。打開策が見つかったよ」

「喜んでくれて嬉しいけどこんなことも思い付かないようじゃ先輩とは呼べないよー?」


すでに先輩呼びではなかったけど、さすがに反論出来ない。


「ほかの参加者の皆さんのお世話は俺に任せて、美羽ちゃんは耀さんのことだけ考えてればいいよ」


なんてフォローまでされてしまった。

ただ問題がひとつ。

背中を押せるだけの人物が、いない。

里香にしても耀のことが目に入っているように見えないし。


「どうしたものかなー」


振り出しに戻ってしまい、頭を悩ます私の元に蓮見さんから着信が来た。


「大丈夫ですか?」


炊事場に駆け寄ると蓮見さんが額に大粒の汗をかきながら食材と格闘していた。

キャンプ場の他の利用客の迷惑にならないように毎回、炊事場での作業は蓮見さんが担当している。

でも今日は季節外れの暑さだ。

おおよその準備は事前にしているとはいえ、30人分の食材をひとりで切り分けるのは大変。


「代わります」


熱中症の一歩手前の蓮見さんを推進課のテントに戻し、参加者たちが火おこしに格闘しているわずかな時間で準備を進めた。
< 43 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop