一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「ていうか、どうして火がつかないの?」


炊事場から戻ると案の定、各グループが焦れはじめていた。

みんな着火剤があるから簡単と思っていたのだろう。

火おこしは意外と難しい。

もっとも、共同作業を通じて仲良くなっていくのが目的だからこれはこれで良い。

推進課はヘルプの声が掛かるまで本部と題したテントでその様子を見守る。


「この着火剤古いんじゃないの?」

「炭がダメなんじゃない?」


あーでもない、こーでもないと言いながら試行錯誤を繰り返すもなかなかつかない。

さすがにそろそろ着火しないと時間が無駄になる。

そう判断した推進課4人が腰を上げた時、輪から追いやられていた耀が一歩前に出た。


「ちょっといいですか」


耀の声に周りの女性が一気に後ずさり、場が開いた。

普通なら傷付く行動に耀は動じず、パンパンに膨らんだウエストポーチをゴソゴソと漁りはじめた。

そしてそこから女の子の絵が描かれた紙を取り出した。


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