一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

周りが笑いに包まれる中、話題に乗ったのは里香だ。


「私、陽に焼けないために黒着てきちゃった」

「……紫外線も虫も、避けるなら白が良いです」


俯きながらも答えた耀に里香と菅原くんは笑顔でアイコンタクトを取り、そして同時に耀の顔を覗き込んだ。


「私、佐々木里香って言います。鈴木さんは物知りなんですね」

「俺、菅原誠って言います。推進課の一員っす。火おこしのコツ、俺より詳しく知っていそうっすよね。伝授して下さいっ！」


ふたりの明るい声に耀の顔が少しだけ上がった。


「僕は、な…す、鈴木耀と言います。バーベキューは事前に得た知識しかありませんがお役に立てるなら幸いです」


謙虚な言い方に里香が声を立てて笑った。

その自然体の笑顔を見た男性参加者たちが里香の虜になったのは言うまでもない。


「みんな、集まってくださーい！火おこし、どうすればいいか、鈴木さんが教えてくれますよ」

「ね？」


菅原くんの言葉に続いて同意を得るために里香が耀の顔をまた覗き込むと、耀は恥ずかしそうに俯きながらも一度頷き、全員の前で火おこしのコツを伝えはじめた。


「まず燃えやすいものを塊にして真ん中に置いて…」

耀の言葉に里香が広告を丸め、真ん中に置いた。


「そこに炭を立て掛けて…」


言われる通りに里香が実践する。


「広告に火をつけます…」