一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
しかも里香と耀の接点が出来た。
これは大きな一歩だ。
ただ私たち推進課メンバーはふたりにだけ気を取られているわけにはいかない。
他の参加者のお世話(気になる相手を聞き出し、話すきっかけを作ってあげる、等)がある。
その中で里香と耀の様子を気にかけるのは他の参加者のことが疎かになってしまう可能性があるので、推進課メンバーは急遽インカムを使って連絡を取り合うことにした。
司令塔は熱中症気味の蓮見さん。
推進課のテントからふたりの様子を見て、必要に応じて私たちに連絡が来る。
「今、話してる!どういう会話をしているのか盗み聞きして来て」
蓮見さんの声に里香を探す。
すると調理した焼きそばや野菜、貝、海老などの焼き物を耀に取り分けていた。
ふたりからいちばん近いのは私。
敬礼ポーズで答え、ふたりに近付く。
すると会話が聞こえたきた。
「鈴木さんはこういうイベントによく参加しているんですか?」
里香の質問に耀は持ち上げていた箸を下げ、首を横に振って答えた。
それに気を利かせた里香は食べながら話しましょう、と木のベンチに耀を誘った。
さり気なく私もふたりに近付き、聞き耳をたてる。
「私もはじめてなんです。でもいいものですね。バーベキューなんて何年振りだろう。楽しいですね」
目を合わせる形では話しにくいのだと察した里香は隣の耀の方ではなく、真っ直ぐ前を向いたまま話している。
それが良かったのか、耀が少しずつ言葉を返しはじめた。