一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「こういう人の多い場は苦手なんです」
「でもちゃんと事前に着火方法を調べてくるなんてスゴイですよ。それに苦手って言っても、恋人を見つけるために参加しているのでしょう?」
里香の質問に耀は優の方をチラッと見た。
「あれ?そういえば…」
いつの間に戻って来たんだろう。
疑問に思いつつ、また耀と里香の方に耳をそばだてると、兄弟であることを隠せと言われている以上、"兄のために参加してる"とは答えられない耀は話しを里香の方にすり替えていた。
「佐々木さんは恋人を見つけに参加しているのですよね?だとしたら僕と一緒にいたら良くないと思いますが」
「私のことなら気にしないで下さい。私は…そこにいる推進課のひとりに頼まれて参加しているだけですから」
いきなり私の方を指差されてドキッとする。
会話を盗み聞きしているのが分からないように近くにいた人にお酌したりして、自然体を装っていたというのに。
「ふふ。彼女の動き、不自然ですよね。私のこと、気に掛けてくれてるんだろうけど」
里香はもちろん耀のことも気に掛けているんだけど、やはりバレバレか。
それなら、と開き直って里香の隣に腰掛け、会話に加わる。
「里香ってなかなか恋人作らないんですよ。美人で気立ても良くて仕事も出来て有能なパーフェクトな女性なのに」
手放しに褒めたことを里香は嫌みに取ったらしく、私の方を睨み付けてきた。
「へへ。この短気なところがたまに傷なんですけどね」
肩をすくめて見せると、耀が「仲良しなんですね」と言って柔らかく笑った。
それに里香が目敏く反応した。