一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
上手くいったカップルから婚姻届の証人になって欲しいと言われたときや、『ありがとう』と言われたときは普通に嬉しい。

幸せのお手伝いだって、あえてその職種を選ばなければ出来るものじゃないし、仕事をする上で理不尽なことはどの部署でもあり得る。

それなら配属された部署で自分なりに頑張るしかない。

そう前向きに捉えてこの特殊な仕事を続けているのだ。


「えらいよね、美羽は」


手元のえいひれに視線を落とし、ため息まじりに言う里香。

肩を落としたことが気になって、問いかけてみることにした。


「異動の話はまだこないの?」


里香はそのたぐいまれなる容姿と真面目な姿勢が評価され、受付に配属されている。

でも、それは本人の意思とは反していて、秘書課への異動願いを数年前から出しているのだ。

なぜ秘書課なのか、その理由は直接聞いたことはない。

だからこれは想像でしかないのだけど、おそらく秘書検定を取得していることと、受付という目立つ場所にいたくないからだと思う。

と言うのも、会社の顔である受付に立つ者として常に笑顔でいる里香の笑顔が自分だけに向けられたものだと勘違いする男性が多いのだ。

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