一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「フフ。ふたりは本当に仲良しね。でもお互いにダメね。菅原くんは『好き』を言い過ぎ。美羽ちゃんは言葉を信じなさ過ぎ」
どういう意味だろう。
蓮見さんから菅原くんに目を向ければ、視線が合い、ジッと見つめられた。
そのいつになく真剣な表情になぜだかドキッとしてしまう。
でもやっぱりすぐに破顔して人を小バカにしてきた。
「だから美羽ちゃんはバカなんだって言ったでしょ」
バカ、バカ、って。
「バカバカ言う方がバカなんだよ、覚えておきな。それとこの話題は終わり!回答用紙を戻しに行きましょう」
里香のことも気になるし。
会場に足を向ける。
すると人だかりの中、里香がお酒を一気飲みしている姿が目に飛び込んできた。
「あ、やっぱり佐々木さんが飲んでたんだ」
隣にいる菅原くんはお酒の減りが早い理由を直接目にして納得した。
でも里香があんな飲み方してるのを見たことがない私はおかしい、と思って駆け寄る。
「里香!」
叫ぶように呼び掛けると気付いた里香が手招いた。
「あー!美羽!ちょうど良かった!鈴木さんが推進課に用があるんだってぇ〜」
お酒に強い里香の顔が少しだけ赤い事に気がついたけど、里香が指差した耀のゆでダコのように真っ赤な顔に驚いて、菅原くんを呼び、耀を人の輪から引き出した。
「耀さん、お酒強くないのに飲んじゃったんすか?」
肩を貸している菅原くんがそう聞いても耀から返事は返ってこない。
フラフラした足取りとぼーっとした視線はアルコール中毒の一歩手前だ。
私たちが集計している間にいったい、何があったのだろう。
会場の方へ目を戻せば、回答用紙の配布により全員の意識がそこに集中して色めきだっている。
ただ里香だけはベンチにひとり腰掛けて天を仰いでいた。