一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「ちょっと里香のところに行ってくる」
耀の介抱を菅原くんに任せて里香の元へミネラルウォーターを手にして行くと、目を充血させた里香が力なく笑って言った。
「さすがに一気飲みはキツいわー」
「どうしてそんなことしたの?!」
お酒に強いって分かっていても里香の体が心配で強い口調になってしまった。
それを謝り、ミネラルウォーターの蓋を開けて里香に手渡す。
「鈴木さんのような真面目な人をこういう場に連れて来ちゃダメだよ」
「なにそれ。どういう意味?」
里香はミネラルウォーターをひと口飲んで参加者の方に目を向けた。
「注いだら注いだ分だけ律儀にお酒を飲み干す鈴木さんを面白がってみんな、どんどんお酒を飲ませてたの」
「え?」
もしかして菅原くんがお酒の減りが早いと言っていたのはこれが原因だったの?
「鈴木さんも、みんなに相手して貰えたのが嬉しかったんだろうね」
でも飲み会などに参加したことのない耀は自分が飲める許容量と飲むスピードを知らなかった。
見兼ねた里香が耀からお酒を奪い、飲んでいるうちに一気飲みをすることに繋がってしまったらしい。
「そんなやり方しなくても…」
私たちにひと声掛けてくれれば注意することくらい出来た。
楽しんでいるところを注意すれば場は冷めてしまうだろう。
耀を連れ出せば、頑張って飲んで楽しんでいた耀の気持ちを台無しにしてしまうだろう。
それでも自分の体を痛めてまですることじゃない。
間違いが起きている場所では誰かが犠牲になる必要はないんだ。
「もう若くないのになー。バカみたいな飲み方しちゃった」
「本当に里香はバカだよ」
「へへ、ごめん」
謝る里香の隣に腰掛け、自分の肩をポンポンと叩くと、里香は笑って頭をもたれた。