一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「『里香は他の方からも人気がありますので』」
本部に戻り経緯を報告すると、菅原くんが優への返答をずはり言い当てた。
「他にいい言い方あったかな?」
「そうだね…」
ゴミの分別をしながら菅原くんは考えている。
「難しいね」
「だよね」
耀と里香にはお見合い形式の方が良かったのかもしれない。
でもそれだと耀は頑なに拒否しただろうし…。
「どうしたものかなー」
こめかみを押さえ、小さくため息をつく。
するとどこからともなくか細い声が聞こえてきた。
その声の主を探すようにキョロキョロと周りを見渡すと…
「わ!」
テントの端で寝ていたはずの耀が正座していた。
「び、びっくりした!起きてたんすか?!」
菅原くんの驚き方はまるで幽霊でも見たかのようで体が硬直している。
座敷わらしに見えなくもないというのが私の本音でもある。
「すみません。驚かすつもりも盗み聞きするつもりもなかったのですが」
頭を下げて謝る耀を見て、座敷わらしとか思ってる場合じゃないと気付いた。
優のこと、一番聞かれてはいけない相手が耀なのだ。
「兄は佐々木さんを気に入りましたか」
耀の独り言のようなか細い声を聞き、思わず天を仰いでしまった。
耀は兄に好きな人が出来て、自身がバーベキューに参加した意味があった、と言わんばかりに何度か小さく頷いていたから。
でも菅原くんは耀に訊ねる。
「耀さんは佐々木さんをどう思いましたか?」
耀はその質問の意図を探るように菅原くんを見つめ、それから俯き、言葉にした。
「素敵な方だと思いました。こんな僕にも普通に接してくれて、助けてくれて」
そこまで言うと耀は立ち上がり、私たちに頭を下げた。
「佐々木さんは会社の後継者である兄に相応しいと思います。どうぞ兄を…兄の恋をよろしくお願いします」