一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
斜め前に腰掛けている菅原くんが私の方を見て言った。


「佐々木さんはなにか言ってなかったの?」


バスで横になっていた里香はバーベキューイベントが終了しても起きず、そのまま一人暮らしをしている私の家に連れて帰った。

そのときに話した内容を聞きたいと言っているのだろうけど、里香とは肝心な話をしていない。

目覚めても二日酔いがひどく、具合が悪そうな里香はすぐに帰ってしまったのだ。


「そっかぁ」

「ごめん。でも、今からでも遅くないよね?すぐに里香に聞いてみます」


スマートフォンを取りに行くつもりで立ち上がった私の腕を蓮見さんが止めた。


「急がなくてもいいわ。でもこの件は美羽ちゃんに任せてもいいかしら?」

「え?え?!どうしてそうなるんですか?」

立ったまま聞き返すと蓮見さんは課長とアイコンタクトを取ってから私に視線を戻し、座るよう促してから詳しく話してくれた。


「同期かつ友達である佐々木さんの情報は必ず美羽ちゃんに入るわ。だからこそ美羽ちゃんが佐々木さんと中村兄弟のお世話をするのが一番だと課長と話していたの。佐々木さんは今、この課の存続にいちばん重要な人だもの」

「それは分かりますが、でも私ひとりでは無理です」


今回のことは普通の社内恋愛とはわけが違う。
推進課の存続を背負うことなんて私には出来ない。


「責任は美羽ちゃんにだけに押し付けたりしない。絶対に。助けが必要ならいくらでも力になるわ。当面は耀さんのことに集中出来るよう、他の社員の方たちの相談は私と課長が引き受けるし」


社員の方も私より経験豊富な課長夫婦に担当してもらった方がいいアドバイスをもらえて、結果に繋がるとは思う。

でも…
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