一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「里香はただでさえ同性から敵視されることが多いんです。その上、優さんのように見た目もステータスもハイクラスの人間に気に入られたとなるとなにを陰で言われるか分かりません」

「そんなの俺が守ってやるよ」


カッコいい……なんて思えない。

首を左右に振り、少し低い声で言う。


「里香のこと本当に好きで恋人になりたいと思うなら結果を急がないでください。慎重になってください」

「それならどうしろって言うんだよ。黙って見てろって?それともきみたちなら出来ることがあるのか?」


そこを突かれてしまうと閉口してしまう。

私たちは基本的に表立って動かない。

推進課の面々を見かけるたびに仕事が手につかなくなっては困るから、イベントへの招待や告白の返事の催促、縁談話など個々に伝えるべき問題は午前8時半から8時45分までにメールで送ることになっている。


「ならきみたちは何をしてるんだ?」

「好みを探ったり、雰囲気の良いお店を探したり、プロポーズのサプライズ演出をしたり、喧嘩の仲裁と空いた穴を埋めることをしています」


でもデートの誘いはしないし、告白ももちろんしない。


「話にならないな」


優が呆れるのも無理はない。

たださっきも言った通り、優が里香に声を掛けたことが知れ渡ればふたりの自由は奪われる。

社内の人間に知られないように優と里香に接点を持たせ、かつ、頑なな里香の心を優に向ける方法は慎重に考えるべきなんだ。

ただし、今のところ里香は耀の恋人候補。

推進課としてはそこを無視し、優に協力する訳にはいかないし、里香の気持ちをおろそかには出来ない。


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