一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「少し時間をください。里香と話してみますから」


頭を下げて願い出るも優には一蹴されてしまった。


「俺は暇じゃないんだ。いいよ、俺は俺なりに行動するから」


そう言って立ち上がった優はそのまま部屋を出て行ってしまった。


「どうしよう」


閉じられたドアを見ながら、黙って私たちの会話を聞いていた菅原くんに意見を求める。


「美羽ちゃんが言った通り、佐々木さんと話すしかないよ。すべては佐々木さんの答え次第だ」

「そうだよね」


菅原くんの言葉にひとつ頷き、相談室を出る。

すると蓮見さんが一歩遅かったと言って駆け寄って来た。

その手には黒地に金色の獅子が描かれた有名な和菓子の袋と赤茶色の縦長の紙袋があった。


「なんですか、それ?」

「耀さんが迷惑かけたからって持って来たの。こっちの和菓子は推進課用。そしてこっちの長い袋は佐々木さんにって」


気を遣わなくてもいいのに。


「ていうか、なんすか、この中身」


ただの赤茶色の紙袋からは中身が想像できない。

蓮見さんから手に取った菅原くんはその重みと形から中身を当てた。


「ワインだ」

「正解。佐々木さんワインが好きなんだって言ってたから持って来たって耀さん言ってたわ」

「へぇ。そんな話までしてたんすね」


私も菅原くんと同じ意見だ。

私たちが聞いていないところでプライベートな会話があったことに期待と驚きを隠せない。

ただ里香が普段から好んで飲むのは日本酒だ。

耀が言うことが正しいとしたらなぜ私の前ではワインを飲まないのかという疑問が浮かぶ。

好きなら飲めばいいのに。

それとこれ。


「渡すべき相手が違う」

「え?」


何が?と言いたげな菅原くんの手から紙袋を取り、研究棟へと足を運ぶことにした。


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