一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
その、人の目に触れたくない、人と関わりたくないという仕草を見て、耀はこういう人だった、と再認識する。


「もったいない」


宝の持ち腐れと言いたいのを堪え、どうしてここにいるのかと、同じ質問をする耀にきちんと答える。


「すみません。驚かしてしまいましたよね」

「そ、そうですね。僕はひとりでやらせて欲しいと同僚に伝えてあるので」


まさか室内に誰かいるとは思わなかったということらしい。

里香へのお礼の品を返すことだけを考えてここまで来てしまったけど、事前に連絡するべきだったと反省する。


「そ、それでご用件は何でしょうか」

「これを渡しに来たんです」


耀の前に差し出すと、メガネを掛けて物を見た。

その行動にふとした疑問が口から出る。


「視力、悪いんですか?悪くないんですか?」


メガネを外した状態でも私の顔は分かるのに、私が持っている手元の荷物はメガネを掛けないと分からないなんて。


「いえ。これはただ渡したものが戻って来たことに驚いて二度見しただけです」

「じゃあそれは伊達メガネですか?顕微鏡も普通に見てましたもんね」


耀の背後にある顕微鏡に視線を移すと耀も顕微鏡を見た。


「これは視力が悪くてもピントを合わせればいいだけなので裸眼でも問題ないです」

「そうなんですか。あれ?でもこれって両目で見るんですか?たしか理科の授業で使ったのって片方の目で見るものだった気がするんですけど。なにか違うんですか?」


興味本位で聞くと耀は顕微鏡に触れ、簡単に教えてくれた。
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