一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「性能に差はありません。でも両目で見る方のが見やすくて長時間観察してても疲れにくいんです。ただし、両目のピントをちゃんと合わせないとかえって疲れてしまうんです」
「へぇ」
知らないことを知ることは楽しい。
見てみたいな。
顕微鏡に近付いてみると、耀が私を避けるように後退した。
その仕草に若干、傷付きそうになる。
でもそれを感じさせないうちに耀は顕微鏡の前の椅子に手のひらを向けた。
「見てみますか?」
「いいんですか?!」
前のめりの私を見て耀は一瞬、驚いたように固まったけど、すぐに破顔して微笑み、腰掛けるように促してくれた。
「ありがとうございます。でもその前にこれ。渡しておきますね」
「え?あ、でもそれは…」
受け取ろうとしない耀に無理に渡すことはせず、顕微鏡の横に置き、私は顕微鏡を覗き込みながら話しかける。
「お礼というのは直接渡すのが筋です。ひとりで会うことに抵抗があるなら一緒に行きますから。それよりあれ?届かないなー」
いくら背が高いと言っても190センチ近い耀とは20センチほどの差がある。
椅子の高さが合わなくて顕微鏡のレンズを覗き込めない。
椅子の高さを変えてまた覗き込むと見たことのないような緑色の世界が広がっていた。
「わぁ!なんか分からないけど凄いですね!あれ?でも両目にすると見えませんね」
「接眼レンズの位置をご自身の目の位置に合わせないといけないんです。そのレンズ動くので動かしてみてください」