一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「あ、えっと…あ!そうだ。里香!里香への贈り物。これから渡しに行きませんか?」
「あ、いえ。まだ実験の途中ですし、それに…」
耀は机の上に置かれた紙袋を手に取り、しばらく考えた後、私の目の前に差し出してきた。
「直接渡すのが筋だと言う吉木さんの意見はごもっともですが、僕には出来ないんです。なので吉木さんからお渡しいただけませんか?」
「なぜ、と聞いてもいいですか?」
ここまで頑なに里香に会おうとしない理由が分からない。
話すか悩んでいる様子の耀を見ながら思い当たることを口にする。
「受付という場所が人目につくからなら里香を個別に呼び出します。相談室…ではやはり人目についた時話題になると嫌でしょうから社外でならいかがですか?」
「ですが…」
答えを否定しようとする耀に畳み掛けるようにして提案する。
「ふたりきりが気まずいなら私も同席します。私自身、耀さんともう少しお話したいですし、必要なら菅原くんも呼びます」
菅原くんと聞いて耀の眉が少しだけ上がった。
同性がいるのといないのとでは全然違うのだろう。
「おふたりが一緒なら。あと3日後であれば」
そう言って了承してくれた。