一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「そうと決まれば佐々木さんにも連絡しよう。いや、会いに行った方が早いね。耀さんのことどう思ってるのか探らないといけないし」


菅原くんの後を追い、エレベーターで里香のいる一階へ降りる。

チンという到着音を合図に菅原くんより先にフロアへ出た。

角を曲がればすぐ受付がある。

午後の2時という中途半端な時間は玄関先に誰もいない。

そこを確認して里香へ近付く。

でも里香に声を掛けるより先に、正面口から颯爽と入ってきた人に先を越されてしまった。


「佐々木さん」


満面の笑みで里香の名を呼び、近付いたのは優だった。

勝手に動かれると困るから里香の身の上話までしたのに。


「なに考えてるの、あの人」


里香のことを想うならあの話を聞いて軽率な行動は普通出来ない。

本当に里香のことを好きなのだろうか、という疑問が脳裏によぎる。


「相手の出方を見てみようよ。ほら、こっち」


様子を伺うつもりの菅原くんは受付の死角にある大きな観葉植物の影に私を連れて隠れた。


「ていうか狭い。菅原くんはあっち行ってよ」


エレベーターホールの陰に隠れるよう指差す。

でも菅原くんは動こうとしない。


「あそこじゃ聞こえないよ」

「でもこれじゃ姿が見えちゃうでしょ」


盗み聞きしてるのがバレたら変に思われる。

菅原くんを追いやろうと後ろ手でしっしっと払う。
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