一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「マジか。でもしょうがないね。美羽ちゃんの声が大きいのがいけないね」

「ははは」


乾いた笑いとともに菅原くんと姿を表すと里香にジロッと睨まれてしまった。


「ごめん。里香に話があって来たんだけど先越されちゃって待ってたの」

里香がため息ひとつ吐いたのに対して優は「ナイスタイミング」と小さな声で言った。


「盗み聞きはよくないが、君たちはちゃんと役に立ったよ」


上から目線の優の言葉を菅原くんがサラッと流した。


「俺たちが来たのは佐々木さんに縁談を持ってきたわけではないっすよ。謝罪したいことがあって来ただけです」


菅原くんはそう言うと里香を見た。

その視線を受けた里香は眉間にシワを寄せていた。

それもそのはず。

謝ることなんて私でさえピンと来ていない。

だから、なにを言ってるのかと菅原くんのカーディガンの裾を引っ張り聞くことにした。

すると菅原くんは一瞬、安田さんの方を見た。

それで理解した。

菅原くんは安田さんが噂をばら撒かないように予防線を張ったのだ。

優が現れた上、推進課が来た、では明らかに縁談話だと思われかねない。

だから私も菅原くんの言う『謝罪』に乗っかる。


「里香。少しだけ時間をもらえないかな?私も里香に謝らなきゃいけないことがあるの」

「それは中村さんも絡んでる話なの?」


里香の問いに優が首を縦に振ろうとした。

それを蹴りを入れることで止め、里香の手を引く。


「優さんは美人に声掛けまくってるだけ。私も声掛けられて困っちゃったー。あははー」

「あ?」


脛を痛がりつつ私を睨むようにして見上げた優に小さく詫びて足早にその場を去る。

けど…
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