一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「苦しい言い訳だったね」
菅原くんに言われなくても分かってる。
私は美人じゃないから優が声を掛けるはずがない。
それに声を掛けられなかった安田さんを遠回しに傷付けてしまった。
「フォローしておくから気にしなくて大丈夫。それよりありがとう」
推進課の相談室に向かう途中、肩を落として歩く私に里香がお礼の言葉を口にした。
「美羽が助けてくれたことくらい分かってるよ。私がああいう人目とか気持ちを気に掛けないひとが苦手だって知ってるもんね」
「あ、うん」
そういう解釈もあるのか、と曖昧に答えるも、柔らかく微笑んだ里香はそのまま黙って相談室に入った。
「それで、話しってなに?」
並んで座る私と菅原くんを交互に見て里香は
話を切り出した。
「謝らなければならないことってなに?」
「その前に」
里香の問いを一旦菅原くんは退けた。
「鈴木さんのことですが、鈴木さんが佐々木さんにお礼をしたいと言ってます」
「え?あぁ。そんなの気にしなくていいのに」
眉根を寄せて困った様子の里香に言葉を掛ける。
「少しでいいから時間作ってもらえないかな?お礼をさせてあげて欲しいの」
同情を買うような言い方をすると優しい里香は納得してくれる。
そこを菅原くんがすかさず攻める。
「佐々木さんは彼のこと、どう思いましたか?」
直接的な問い掛けに里香は私の方を見てからまた菅原くんの方を見て、フッと吹き出した。