一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「中村家の人間だとしても自己中にも程があります」
「そんなことない。俺は自分の気持ちに正直に動いているだけだ」
口ごたえする優にカチンと来た。
「それを自己中だって言ってるんです!」
少し大きな声で言うと、優はハッとしたように私の方を見た。
それを機に一度深呼吸して怒りの気持ちを鎮め、続ける。
「里香の気持ちを考えて行動してください。それとこの部屋には勝手に入らないでください。何のために防音加工までしているのか、分からないわけではありませんよね?」
優に問い掛ける。
そうすれば気持ちは伝わる。
優は目を泳がし、自身の非を認めた。
「すまない。この件は俺が全面的に悪い。謝るよ」
素直な謝罪の言葉に里香の表情が和らいだ。
それでも優の行動の意味を聞くことにした。
「なんで入って来たのか聞いてもいいですか?」
「あ、あぁ。佐々木さんに聞きたいことがあって、ここにいるって聞いて開けてみたらちょうど耀の話をしてたから」
そこまで言うと優は里香の方を向いて話しを続けた。
「俺はアイツが酒に弱いことを知らなかった。それに、あんな気味悪い男が俺の双子の弟だって知ったらみんなどう思うと思う?」
質問で返した優に里香の表情が少し険しくなった。
「兄弟なんですよね?」
「兄弟だからなに?仲良くしなきゃいけない?ひとりにさせてはダメ?酒の飲み方まで教えてやらなければいけない?面倒見てやらなきゃならないの?」
濁さない言い方に里香はあからさまに嫌悪の表情を向けた。
それを見た優は切なく笑い、里香から目を逸らして続けた。
「嘘だよ。俺は耀に近付くことを許されていないんだ」
悲しそうな口調と瞳を見た里香は眉間にシワを寄せた。
「そんな顔するな。美人が台無しだ」
優は自身の眉間を指で指し、それから小さく息を吐き出すと、真剣な表情で里香に訊ねた。