一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「きみはどうしてあの時、耀を助けた?」

「え?」


質問の意味を分かり兼ねている里香に優が言葉を付け足した。


「不思議だったんだ。きみみたいな美人が耀のように気味悪い男に近付いたことが」

「そんなこと…」

「ないなんて言うなよ。気味悪いのは誰の目から見ても明らかだ。それとも本気で変じゃないと思ってる?ならあいつと付き合える?恋人同士になれる?」


ちょっと待って。

優はなにを言っているの?

里香に好意があるはずなのに、耀を助けた里香を質問攻めにしている。

なんで…


「耀に近付いた理由がもし耀を中村家の人間だと知っていたからだとしたら二度と耀には近付かないでくれ」


なるほど。

そこを懸念していたって訳か。


「耀と仲良くなれば願いを叶えてくれるかもって思うのは浅はかな考えだ。秘書課に異動するための足枷なんだろう?さっき安田さん…だっけ?彼女に聞いた。きみが秘書課への異動を切に希望していると」


安田さん。

余計なことを。

ていうか私でさえ聞いたことのないことを優はサラリと聞いた。

当然、里香は答えない。

無言で優の真意を探るように見つめている。

それを受けて優はひとつ条件を提示した。


「中村家の人間が必要なら俺を利用しろ。俺の恋人になればいい。そしたらなんでも叶えてやる」


あぁ…

その言い方はダメだ。


「結構です」


予想通りの言葉で答えた里香は、優から目を逸らした。


「なぜだ。耀に近付いたのはそれが目的だろう?」


里香を問い詰めようとする優の間に割って入る。


「里香は今、耀さんの正体を知ったんです。バーベキューの時は本当に知らなかったんですよ。だから耀さんに近付いたのは純粋に耀さんを助けたいと思ったからです。ね、里香?」


里香に話を振った。
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