一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
ミッション5食事会でお近付き
優はその後、所属部署から呼び出されてしまい、明確な答えはもらえなかった。
そのまま3日が過ぎ、耀と約束した日がやって来た。
会社の裏門前で釈然としない気持ちを抱きつつ、実験で遅くなっている耀をひとり待つ。
「はぁ」
思わずため息が漏れてしまう。
この3日間、いったい、あの兄弟の間にはなにがあるのか、里香はなぜしたたかだなんて言ったのかを考えているのに答えが出ないのだ。
「直接聞くしかないんだろうな」
でも完全にプライベートな部分だ。
推進課の存続云々に関して本来関係のない里香と優にこれ以上、踏み込んでいいのか、躊躇している。
ただ、野田専務から言い渡されている期限はあと2ヶ月。
悠長に構えている時間はない。
この件を任せてくれた課長と蓮見さん。
そして推進課を頼り、幸せになっていった人たち。
推進課を作った会長の想い。
それらの気持ちを思えば立ち止まってはいられないんだ。
「とりあえず、今日の食事会で上手く事を運ばないと」
迅る気持ちを抑えつつ、目を敷地内にあるバス乗り場へと向ける。
すると無地の白Tシャツに黒の細身のパンツ、黒のスニーカーと至ってシンプルな服装のすらりと背の高い男性がひとり降りて来た。
顔は帽子で隠されているけど爽やかでとても素敵だ。
でもあんなステキな人、社内にいたのだろうか。
ひと目見たら忘れないだろうに。
…って、あれ?
こっちに駆け寄って来る。
あの人はもしかして…
「耀さん?!」
「お待たせしてすみません」
目を合わせず俯き加減。
対峙するにはあまりに遠い距離感。
やはり耀だ。
「今日はいつもと雰囲気が違いますね」
思った事を口に出すと耀は恥ずかしそうに俯き、小さな声で答えた。
「皆さんまで変な目で見られたら申し訳ないと思いまして」
それはつまり、耀はあの姿を自分でも気色悪いと思っていると理解して良いのだろうか。
だとしたらなんでそんなことするのだろう。
「もしかして女避けですか?」
「え?」
耀は予想しなかった言葉に驚いたように瞬きを繰り返した。
「すみません。でも耀さん実はイケメンですよね?スタイルもいいし。それなのにわざわざそれを隠すなんて、そこまでして恋愛したくないんですか?」
「え?あぁ、なるほど。そういう捉え方もあるんですね」
目からウロコといった様子の耀を見て、私の仮説は違うのだと分かった。
「ではなぜその恵まれた容姿を隠すんですか?」
「そう…ですね…」
歯切れが悪くなった耀にこれ以上聞くのは酷な気がした。
だから耀の隣に立ち、菅原くんと里香が待つお店へと歩きながら話の矛先を少しだけ逸らし、続けることにした。