一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
唯一、女らしくないのはお酒の席だ。
嗜好がオヤジっぽく、時に冗談を言う。
いや、愚痴っぽい話の方が多い気がする。
でもそれもなんとなくオヤジっぽく、そこに隙を感じさせてくれている。
「みんな里香のことをきちんと知れば、里香は見た目だけじゃないって分かるはずなんです」
バーベキューの時のように、里香は心も綺麗な女性なのだ。
「見た目が頭抜けすぎて損してるんですよ。もったいないですよね。でも、見た目を偽ってでも人に取り入ろうとする訳じゃない、里香の強さも私は好きなんです…って、ごめんなさい!耀さんのこと否定してる訳ではないですからね!」
話してる途中で、見た目を偽っている耀を完全に否定してしまっていることに気付いた。
そんなつもりはなくても、そう聞こえたに違いない。
「すみません」
頭を下げて謝る私に耀は優しさのある声をかけてくれた。
「謝らないでください。大丈夫です。吉木さんの言葉に裏があるなんて思ってませんから」
顔を上げると耀は柔らかく微笑んだ。
「佐々木さんのことを見た目だけじゃないってちゃんと分かってくれる人が現れてくれるのを推進課として、親友として待っているんですよね?」
「え、えぇ」
その通りだけど、この流れからすると…
「大丈夫です。兄はきっと佐々木さんの優しさに気付いていますから」
やっぱり。
優に話を繋がれてしまった。
耀に里香の良さをあえてアピールしたつもりがこれでは本末転倒だ。
でも、もし耀が里香を気に入ったとしたらそれはそれで兄と争うことになる。
それを未然に防いでいるのかもしれない。
いや、いちばんはじめに聞いたように本当に恋愛に興味がないことも念頭においておかなければいけない。
「耀さんって難しい、ていうかなんか複雑ですね。私の頭では処理しきれない…って、また失礼なことを!すみません」
思わず呟いてしまったことに謝ると耀は眉根を寄せて笑った。
「吉木さんは心の声が表に出てしまうんですね。せっかくポーカーフェイスが出来るのに、口を開いてしまったら気持ちがもろ出てしまう。もったいない気がしますが、良いですね」
「良いですか?」
あまり褒められた気はしないけど、照れたように微笑む耀を見て、たしかに褒められてるような気になるのだから不思議だ。
それに耀の笑顔に触れて私の口角も自然と上がる。
「行きましょうか」
立ち止まった足を動かす。
すると耀が突然、大きな声を出した。
「あぁっ!」
「ど、どうしました?!」
「す、す、すみません!大事なものを忘れてしまいました」
オロオロとうろたえる耀に忘れ物の内容を問う。
「何を忘れたんすか?」
「佐々木さんに渡すお礼を自宅に忘れてしまったんです」
届けたワインのことか。
それを渡すのが目的だったけど、ここまで来たら戻れない。
「とりあえず今日はお礼を言いましょう」
お礼さえ直接伝えれば、品物は私が渡してもいいだろう。
本音はもう一度、里香に会いたいと言わせたいところだけどそれには私たちがいかに盛り上げるか、だ。