一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「お酒ならなんでも好きよ」


お冷を口にしながら答えた里香に首を振る。


「そういうことじゃなくて。ほら、普段、私と食事する時、ううん、私以外の面子が揃う場でも日本酒とかビールとかを好んで飲むでしょ?赤ワインなんてどっちかと言ったら飲まないから好きじゃないと思ってたよ」

「そうね。あまり飲まないわね。でもそれって変なこと?」


そう聞き返されてしまうと困ってしまう。

私はただ里香のことを知っているつもりでいたのに、そうでなかったことが少し寂しかっただけだから。

些細なことだけど里香のこと『日本酒エイヒレ好きのオヤジっぽい女性』なんて思ってしまっていて、時にはそう紹介までしてしまっていた。

本当は見た目通り、赤ワインとチーズを好み、それが似合う女性だったのに。


「ほんと、私は里香のこと知らないんだね」


つい先日、里香は『美羽は私のこと分かってない』って言われたことを思い出した。

本当にその通りだ。


「そんなの当たり前よ。美羽は私じゃないんだし、付き合いだって短いんだから」


付き合いは短くてもそれなりにお互いのことを話して理解していたはずなのに。

冷たく突き放されて、悲しくなる。

でも今、ここで悲しんでる場合ではない。

私と里香のすれ違いで場の雰囲気が悪くなってしまった。


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