夢のかけら
ある時わたしは、夢のかけらの商人に出会った。
いらっしゃいいらっしゃい。夢のかけらを売ってるよ。
夢のかけらを集めて集めて、大きな夢を叶えましょう。
そのお手伝いわたしがします。
歌う、歌う。商人が歌う。
商人の歌に引き寄せられて、わたしは声をかけていた。
ください。夢のかけらをください。
わたしの夢を叶えるために、あなたの力を貸してください。
商人は言った。
もちろん。あなたなら夢を叶えられます。あなたはきれいな目をしている。あなたの夢はきっと叶います。
わたし、舞い上がった。
目がきれいだと褒められて、わたしは世界で一番価値のある人間だと思ったの。
世界がわたしを必要としている。
わたしは夢を叶えられる人間だ。世界でたったひとりの、「女優さん」にぴったりの人間だ。
「女優さん」以外の未来なんて考えられない。
だってこんなに、魂が求めてる。
「女優さん」に続くこの道を歩いていくということを。