カフェ・ブレイク
「俺のこと、好き?」
寝室になっちゃんを運び、ベッドに落として、組み敷いて、顔がくっつきそうなほど近づけて、そう聞いた。

……そんなこと聞かれると思ってもみなかったのだろう。

なっちゃんは真っ赤になって、コクコクッと何度もうなずいた。
「好き。大好き。」
涙が目尻からこめかみを伝って流れ落ちてく。

たまらず、まぶたに口付けた。
「旦那に抱かれながら、俺のこと、思い出した?」

なっちゃんの瞳に陰りが落ちた。
「……ベツモノだったから。」

そうつぶやいて、なっちゃんは顔を歪めた。
「あまり聞かないで。言いたくない。」

そりゃそうだろ。
「でも、俺は聞きたい。なっちゃんがどんな風に変わったのか、知りたい。旦那に、どうやって可愛がられた?」
追い詰めるように、質問を重ねる。

なっちゃんは、顔をくしゃくしゃにして、声をあげて泣き出した。

「ダメ。泣いても許さない。誤魔化されない。」
傍らに手枕で横臥して、空いた左手でなっちゃんを弄びながらそう言った。

「ちゃんと言わないと、抱かない。」
そう言いながらも、俺の左手はじわじわとなっちゃんの身体を這い回った。

泣いてるくせに反応するのが楽しくて、俺はますます悪戯を激しくする。
なっちゃんは、頑固に何も言わず、ただ泣いていた。
汗と涙でやたらキラキラしているなっちゃんを見ていると、俺のほうが我慢できなくなってしまった。

そんなに言いたくないのか。
……ものすごくアブノーマルなことをされた、とも思えないのだが。

「頑固な奴。」
そう言って、なっちゃんの額を指で弾いた。
なっちゃんは赤くなった頬を涙に濡らしたまま、整わない息で言った。
「……言わなくても……わかる……来て……」

ぐっときた。
どういう意味か、推し量る余裕すらなくなった。
もっとじらしたかったのだが……
まあ、いいか。

……。

なっちゃんの言う通りだった。
どうやら、全然ヤッてなかったらしい。
いわゆるセカンドバージン状態じゃないか。

さすがに、無理強いするのはためらいが生じた。
なっちゃんの「はじめて」の時、気づかずに痛い思いをさせてしまったことは、俺の中でけっこうな悔恨になっていた。
……同じ過ちは繰り返したくない。

急に慎重になった俺に、なっちゃんがものすごく不安そうな顔になった。
かわいいな……。

それにしても、キスも久しぶりだというのだろうか。
ぎこちない。

一旦離れて、なっちゃんの唇を噛んだ。
「ぃたっ!」
驚いて声を挙げたなっちゃんの唇に少し血が滲んだ。

「2年間、何やってたん?はじめての時より下手くそで、萎えたわ。」

なっちゃんは真っ赤になった。
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