カフェ・ブレイク
「……ごめんなさい。」

謝られても、なあ。
「なんか、できの悪い生徒を持った教師ってこんな感じ?俺、ちゃんと教えたのに、って。」

萎縮するなっちゃんの顔を逃さないように、両手で包んで、俺のほうに向けさせる。
「旦那、キスもまともにしてくれなかった?」

なっちゃんの顔から血の気が引いた。
赤くなったり青くなったり、忙しいな。

「てか、ちゃんと結婚生活したの?まさか拒否ったわけじゃないよな?」
なっちゃんは目を大きく見開いた。
「……ほんっと、デリカシーない……」
本気で怒ってるなっちゃんが……かわいかった。

ぺろりと、なっちゃんの唇の血を舐めた。
……もしなっちゃんが感染する病気を持ってたら……一蓮托生か。
まあ、いい。
もう一度、深く深くキスをしてから、交わった。

遠慮も気遣いも捨てて、俺達は互いを貪った。
途中からなっちゃんは、ずっと泣いていた。
……うれしい……気持ちいい……ずっとこうして欲しかった……と、何度もうわごとのように繰り返しながら。
男冥利につきるよ。



翌朝、目覚まし時計のアラームで目を開けた。
……いてて……。
腕が完全に痺れてる。
まだ寝息をたててるなっちゃんを起こさないように起きるのは……無理か。
なるべくそーっと腕を引き抜こうとしたけれど、途中でなっちゃんの目が開いた。

「ごめん、起こした。まだ寝てていいよ。」
「……おはようございます。……何時ですか?」
「8時。俺は店の準備があるけど、なっちゃんはゆっくりしてたらいいから。」

そう言って、なっちゃんの頬にキスしてからベッドを抜け出た。
……背後でなっちゃんがジタバタと悶絶していた……。
少しくすぐったく感じながらも、この子、マジでどんな結婚生活を送ったんだ?と可哀想になった。

シャワーを浴びて出てくると、服を着たなっちゃんが冷蔵庫を開けていた。
「まだ時間ありますよね?何か作ります。」
「ありがと。そういや、夕べ何も喰ってなかったっけ。適当に頼むよ。」
「はいっ!」
なっちゃんは、うれしそうに冷蔵庫とシンク下を何度も開けて食材を確認していた。

……また、なっちゃんの手料理が食べられるのか。
やばいな。
今度こそ、手放したくなくなるかもしれない。

しばらくして、なっちゃんが作り出したのは、パンケーキだった。
生地が甘くない……チーズが入ってるらしい。

「リコッタチーズというわけにはいきませんが、粉チーズとヨーグルトでそれっぽくしてみました。」
「うん、美味いよ。これ、好きな味だ。」

トマト多めの野菜ジュースとも、ものすごく合っていた。
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