カフェ・ブレイク
慌てて小門は笑顔を作った。
「いや!とても美味しいよ。ありがとう。……玲子から聞いた?」

「少しだけ。さんざんだった、って。海は汚染されて汚いし、中国やロシアのお客さんはマナー悪いし、ホテルやレストランのサービスはなってないし……本妻さんと間違われたのに小門さんが訂正してくれなかった、って。」
……少し?それで?まだあるのか?

小門はますます悄然とした。
「やっぱり最初に俺が訂正しなかったのを怒って、意地になってたんだな。」
なるほど、玲子らしい。

なっちゃんは、首を振った。
「ひどい……そうじゃないと思います。玲子さんは、小門さんに恥をかかせたくなくて我慢してたんだと思います。」
突っ伏してた玲子がぐじぐじと泣き出した。

寝てると思ったら起きてたのか。
「玲子、起きてるなら喰えよ。美味いぜ。」

そう声をかけると、玲子がガバッと起きた。
「食べるわよ!あんた、慰めに来たんじゃないの!?もうちょっと、優しいこと言いなさいよ!」

めんどくせー。
「俺の役じゃないだろ、それ。小門、慰めてやれよ。」
そう言って、俺は再び豆ご飯を口に運んだ。

なっちゃんが玲子のすぐそばに行き、背中をさする。
「慰めるんじゃくて、褒めてあげてください!玲子さん、小門さんのためにがんばったんですから。……私なら、その場で訂正するか、同行を断るか、部屋に閉じこもるか、1人で帰国しちゃうかも。ほんと、えらいですよ。」

玲子は、なっちゃんにしがみついて、声をあげて泣いた。
……なんだこの三文芝居は。
居心地悪いにもほどがある。

俺はひたすら黙々と料理を食べた。
早く酔いたかった。

小門は、仕方なく玲子をなだめる言葉をかけてから、また食事に戻り平らげた。
2人にあやされて、玲子は涙と鼻水をティッシュでおさえながら、それでもしっかり食べ切った。


食後に、シーバス・リーガルを開けた。
玲子はショットグラス1杯を飲み切ることなく、寝てしまった。
早々に小門がベッドに運んだ。

あとは3人で酒を楽しみながら語らった。
「玲子に優しくしてくれて、ありがとう。」
しみじみと小門がなっちゃんに礼を言った。

「……そんな。私のほうこそ、いつも玲子さんに励まされて元気をもらってます。」

全く違う2人なのに、本当にウマが合うらしい。

不思議だな。
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