カフェ・ブレイク
「神戸じゃないんですか?大阪?まさか東京に戻るのか?」
うちから通えるところであってほしい……そう思っている自分に気づいて、俺は動揺した。
なっちゃんは、苦笑しながら言った。
「京都です。」
え?
京都?
予想外の返答に、俺は喜ぶべきなのか、嘆くべきなのかも、自分でわからなかった。
……通えないことはないけど、毎日通うのはけっこう大変だよな。
「京都……。」
ただ、力なく繰り返した。
「まあ、試験と面接もあるらしいので、落ちるかもしれませんけどね。でも、公募はしないらしいので競争率は低そうです。」
公募しないって!
「その話、誰が知らせてきたんですか?同僚?」
「いえ。教頭先生が。」
教頭!
そんなの、お墨付きもらって確定みたいなもんじゃないか?
「でしたら採用されそうですね。」
どうしても声がかたくなってしまう。
なっちゃんは困った顔をしていた。
帰宅後、なっちゃんの顔をまともに見られなくなった。
これからどうするつもりなのか、聞きたいのに聞けない。
このままココに住むのか、どこか近くに引っ越すのか、京都に住むのか、気になってしょうがない。
かといって、俺自身の気持ちも中途半端なことを自覚しているので、何も言えない。
ただ、なっちゃんの決定を待つことしかできない。
大事な話をできないまま、日々が過ぎていった。
8月の最終週、なっちゃんは京都へと採用試験を受けに行った。
結局、候補者は他に誰もいなかったらしく、役員面接であっさり合格したらしい。
「まさかその場で合格って言われるとは思いませんでした。これでとりあえず5年間の仕事は確保できました。」
ニコニコそう言ったなっちゃんに、一応「おめでとう。」と言った。
けど、祝う気持ちより、葛藤が強かった。
どこに住むのか、さらっと聞けばいいのに、俺は結局この時も口にできなかった。
何も言えない分、夜はなっちゃんに執着をぶつけた。
クソッ!
これじゃ、俺、なっちゃんの別れた旦那と同じじゃないか?
けじめをつけろ。
そう思ながらも、俺は現実には何もできなかった。
今のこの状況が居心地よすぎて、一歩も動けないのだろう。
無駄に歳を喰って、臆病になってるのかもしれない。
情けない……。
秋が深まった頃、頼之くんの名前が小さく新聞に掲載された。
3年生が抜け、希望通りにフォワードになった頼之くんは、早速新人戦でハットトリックを決めたらしい。
まだ1年生なのに頼之くんのワンマンチームとなりつつあるようだ。
3合のおにぎりを無理やり食べてるのか、成長期だからか、頼之くんは半年でずいぶんとたくましく成長した。
「背が……また伸びたのかな。」
頼之くんがスクラップブックに貼って行ったチームの集合写真を見て、小門は目を潤ませていた。
「そうですね。来られるたびに大きくなってる気がします。制服、途中で作り替えることになりそうですね。」
春には大きめだったのに、もうピッタリだったっけな。
「そうか……。」
小門は遠い目をした。
うちから通えるところであってほしい……そう思っている自分に気づいて、俺は動揺した。
なっちゃんは、苦笑しながら言った。
「京都です。」
え?
京都?
予想外の返答に、俺は喜ぶべきなのか、嘆くべきなのかも、自分でわからなかった。
……通えないことはないけど、毎日通うのはけっこう大変だよな。
「京都……。」
ただ、力なく繰り返した。
「まあ、試験と面接もあるらしいので、落ちるかもしれませんけどね。でも、公募はしないらしいので競争率は低そうです。」
公募しないって!
「その話、誰が知らせてきたんですか?同僚?」
「いえ。教頭先生が。」
教頭!
そんなの、お墨付きもらって確定みたいなもんじゃないか?
「でしたら採用されそうですね。」
どうしても声がかたくなってしまう。
なっちゃんは困った顔をしていた。
帰宅後、なっちゃんの顔をまともに見られなくなった。
これからどうするつもりなのか、聞きたいのに聞けない。
このままココに住むのか、どこか近くに引っ越すのか、京都に住むのか、気になってしょうがない。
かといって、俺自身の気持ちも中途半端なことを自覚しているので、何も言えない。
ただ、なっちゃんの決定を待つことしかできない。
大事な話をできないまま、日々が過ぎていった。
8月の最終週、なっちゃんは京都へと採用試験を受けに行った。
結局、候補者は他に誰もいなかったらしく、役員面接であっさり合格したらしい。
「まさかその場で合格って言われるとは思いませんでした。これでとりあえず5年間の仕事は確保できました。」
ニコニコそう言ったなっちゃんに、一応「おめでとう。」と言った。
けど、祝う気持ちより、葛藤が強かった。
どこに住むのか、さらっと聞けばいいのに、俺は結局この時も口にできなかった。
何も言えない分、夜はなっちゃんに執着をぶつけた。
クソッ!
これじゃ、俺、なっちゃんの別れた旦那と同じじゃないか?
けじめをつけろ。
そう思ながらも、俺は現実には何もできなかった。
今のこの状況が居心地よすぎて、一歩も動けないのだろう。
無駄に歳を喰って、臆病になってるのかもしれない。
情けない……。
秋が深まった頃、頼之くんの名前が小さく新聞に掲載された。
3年生が抜け、希望通りにフォワードになった頼之くんは、早速新人戦でハットトリックを決めたらしい。
まだ1年生なのに頼之くんのワンマンチームとなりつつあるようだ。
3合のおにぎりを無理やり食べてるのか、成長期だからか、頼之くんは半年でずいぶんとたくましく成長した。
「背が……また伸びたのかな。」
頼之くんがスクラップブックに貼って行ったチームの集合写真を見て、小門は目を潤ませていた。
「そうですね。来られるたびに大きくなってる気がします。制服、途中で作り替えることになりそうですね。」
春には大きめだったのに、もうピッタリだったっけな。
「そうか……。」
小門は遠い目をした。